「オウンドメディアリクルーティング」という言葉を聞いたことはありますか?
日本では人口減少に伴い求人市場において売り手の状態が続いており、ただ求人票を掲載するだけでは人は集まらず、企業はさまざまな対策を行わなければならなくなってきました。
また、終身雇用の考え方が薄れ、「やりたい仕事をする」という意識が強くなり、ミスマッチによる離職の回避も課題となっています。
今回は、そうしたことを背景に近年実施する企業が増えている「オウンドメディアリクルーティング」について解説していきます。
もくじ
オウンドメディアリクルーティング(OMR)とは
提唱者のindeedは、オウンドメディアリクルーティングを以下のように定義しています。
「オウンドメディアリクルーティングとは、自社の運営するメディア(採用サイトやSNS・社員)を軸に、高付加価値人材 に 自社主体 で直接メッセージを発信し、共感を喚起することで人材獲得につなげていく能動的リクルーティングです。」
従来は求人媒体を利用し、テンプレートにそって情報を掲載して応募を待つのが主流で、自社のWebサイトから応募してもらう手法はあまり取られていませんでした。
しかし、その自社の採用サイトやSNSを活用して人材を獲得していくことが「オウンドメディアリクルーティング」です。
ダイレクトリクルーティングとの違い
似た用語で、「ダイレクトリクルーティング」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
こちらはビズリーチが提唱している採用活動です。
「日本では常識である「待ち」の採用手法だけでなく、経営者、役員、採用担当者などが自ら候補者を見つけ出してアプローチする「攻め」の採用手法も含め、あらゆる手段のなかからそのときにとれる採用手法を選択する、「ダイレクトリクルーティング」という採用活動です。海外ではこの「ダイレクトリクルーティング」が主流になりつつあります。」
求人媒体に一定期間求人情報を掲載する手法や人材紹介の他に、媒体に登録されている求職者情報を見て企業の人事担当が直接求職者にスカウトを送り、面談や面接を行う手法が新しく生まれています。
そうしたスカウトに挙げられるような、採用活動中の企業が能動的に求職者にアプローチする採用活動を、ダイレクトリクルーティングといいます。
採用動向とオウンドメディアリクルーティングの必要性
なぜ自社の採用サイトやSNSを活用した採用活動が注目されるようになったのでしょうか?
背景には以下のようなことがあります。
- 人口の減少などから求人倍率が上昇しており、売り手市場である
- 求人媒体数の増加により求職者が分散し、企業の採用効率が落ちている
- 働き方改革により職種や給与だけでなく、働く環境も重視する求職者が増えている
- Web上でさまざまな情報を集めて企業選定する求職者が増えている
こうしたことを背景に、自社で持っているメディアを活用し、自社の業務内容や強み、社風、独自性などを詳細に伝えることでマッチした人材を獲得していこうという動きが強まりました。
オウンドメディアリクルーティングを実施するメリットとデメリット
ここで、オウンドメディアリクルーティング実施のメリットとデメリットを整理します。
メリットだけでなくデメリットも把握しておくことで、無理の無い計画を練ることができるようになりますのでしっかり押さえておきましょう。
OMRのメリット
- 採用サイトで独自のコンテンツを発信できる
- アクセス解析を行いPDCAを回せる
- 自由なタイミングで発信ができる
- 掲載期間がなく半永久的に掲載できる
つまり、上手に使えば多くの情報を発信でき、自社のことをよく知った上で応募してきてくれる求職者に出会える確率が上がります。
求職者のセルフスクリーンもしやすくなり、ミスマッチに気付くことなく選考が進むことも避けられます。
オリジナリティのある採用サイトにすれば、他社と埋もれることもありません。
もし結果が良くなくても、解析を通して原因を特定し、改善していけることも期待されます。
OMRのデメリット
- 運用体制を整える必要がある
- 採用媒体の力(媒体力)に頼れない
オウンドメディアリクルーティングは、とにかく能動的に動くことが求められます。
採用サイトリニューアルにあたっての業者選定、方向性の策定、取材などの準備や、社内の運用体制の整備など、考えなければならないことがいくつもあります。
また、サイトを作って運用するだけでなく、SNSなどの活用も含まれますので、運用の方針や炎上対策なども丁寧に組み立てていく必要があります。
実施する際には、十分なリソースの確保と余裕あるスケジューリングを心掛けましょう。
オウンドメディアで発信すべき2つの要素
では、実際にオウンドメディアリクルーティングに乗り出す時に、一体何を発信していけばよいのでしょうか?
もちろん、採用媒体に掲載していた内容をそのまま掲載するだけというのはNGです。
indeedでは、発信する内容を下記の2種類に分類しています。
・出会うための情報発信 : ジョブディスクリプション
・選ばれるための情報発信 : シェアードバリューコンテンツ
それぞれ噛み砕いて解説していきましょう。
ジョブディスクリプションとして記載すること
ジョブディスクリプションでは、「職務内容」を詳細に書いていきます。
よく掲載されている、職種、業務内容、勤務時間、給与、福利厚生などのほかに、どんなスキルを使うのか、どんなチーム編成で取り組むことが多いのか、どんな目標を掲げて取り組むことになるのかなどをより詳しく記載します。
これにより、自身が実際に働いている姿をより鮮明にイメージしてもらい、希望している働き方とミスマッチがないかを確認してもらいます。
シェアードバリューコンテンツとして記載すること
シェアードバリューコンテンツでは、社内の価値観、思想など、社内で行動指針となっていく部分を記載していきます。
もしここの部分が求職者の価値観とマッチすれば、求職者の志望度が一気に上がることが期待できます。
たとえば、合理的に淡々と業務を進めることを好む求職者が、時には時間をかけながらコミュニケーションを取りチームでゴールを目指す思考の企業に入るとやりづらさを感じてしまうかもしれません。
あるいは、堅実で確実な方法を好む傾向にある企業で、多少のリスクはあっても新しいことをどんどん試して発展してきたいという志向の求職者はその長所を発揮できるでしょうか。
「何をやるか」に意識が集中しがちですが、こうした価値観を共有できる気質があるかどうかも重要な視点になっていきます。
特に企業理念は、企業が行動を起こす際の軸になる部分です。
ここに共感できる求職者を集めることは強い組織を作る上でも重要となってくるでしょう。
オウンドメディアリクルーティングの実践手順
では、実際にどのようにオウンドメディアに情報を落とし込んでいけばよいか、順番に解説していきます。
経営戦略から採用戦略を立てる
人事は経営戦略に基づいて変動していきます。
まずは経営戦略を元に採用戦略を立てましょう。
以前、採用サイトのコンテンツ制作について解説した記事で、採用戦略を次の5つの要素に分けてご紹介しました。
今回もこちらを元に進めていきます。
1.どんな人材を何人採用するか
2.いつまでに採用するか
3.どういう目的で採用するか
4.どんな方法で採用するか
5.どのくらいの予算を想定するか
求める人材の詳細を洗い出す
採用戦略の5つの要素それぞれに紐づいてくる内容は次のようになります。
- 1.どんな人材を何人採用するか → 掲載する情報、コンテンツの選定
- 2.いつまでに採用するか → 採用サイトリニューアルのスケジュール策定
- 3.どういう目的で採用するか → 掲載する情報、コンテンツの選定
- 4.どんな方法で採用するか → 活用する媒体の選定
- 5.どのくらいの予算を想定するか → オウンドメディア運用のリソース確保
掲載する情報やコンテンツの選定は、「どんな人材を何人採用するか」、「どういう目的で採用するか」という計画を元に進めていきます。
- 活用するスキル
- 与えるポジション
- 活かしてほしい経験
など、さらに細分化して決めていきましょう。
自社の特徴や強みを洗い出す
自社のことは、企業側から発信しなければ、求職者は基本的には知る術がありません。
口コミサイトなどでは企業の評判などを知ることもできますが、企業自ら偽りのない情報を掲載することを心掛けましょう。
具体的な記載する情報の例は以下です。
- 企業理念
- 大事にしていること
- 社風
- 社内イベント
- チーム体制
など、求職者がどんな環境に身を置くことになるのかを想像できる情報を洗い出しましょう。
求める人材、自社の特徴にあった媒体とコンテンツを作成する
掲載する情報が洗い出せたら、それらの見せ方を考えていきましょう。
ミスマッチが発生しやすいところ、より具体的に想像した上で応募してほしい内容に関してはコンテンツ化して伝えていきます。
コンテンツの例をここでは7つ挙げます。
- 数字で見るコンテンツ
- 座談会コンテンツ
- よくある質問コンテンツ
- 1日のスケジュールコンテンツ
- 福利厚生コンテンツ
- オフィスツアーコンテンツ
- キャリアパスコンテンツ
また、全てを採用サイトで完結する必要もありません。
ターゲットに併せてSNSや外部メディアへの掲載も視野に入れ、計画を練っていきましょう。
採用コンテンツの詳細については、下記記事でご紹介しておりますので、併せてお読みください。
【関連記事】採用サイトのコンテンツを事例で解説!求職者に伝わる企業の見せ方とは
事例紹介
最後に、弊社の取組を例に解説していきたいと思います。
採用後のミスマッチは弊社も同じように悩んだ時期がありました。
そこで採用手法を見直し、採用サイトやSNS等を立ち上げて自ら発信し始めました。
採用サイトの制作
引用元: ジーピーオンライン採用サイト
当社では、2022年に「驚きでも感動でもなく“ありがとう”を。」をスローガンに掲げ、オウンドメディアリクルーティングの強化を目的としてリニューアルを実施しました。リニューアル前後で比較すると書類通過率が約3.9倍へと増加しており、当社の求める人物像とマッチした応募者の割合が上がっています。
求職者が知りたい「価値観」「福利厚生」「スタッフ紹介」「評価制度」などのコンテンツの拡充と、事業内容も採用サイト内で改めて紹介する構成にしたのが主な変更点です。
コンテンツの中でも特徴的なのが、「代表メッセージ」です。当社では代表のモチベーショングラフを交えた働く意義についてのメッセージから事業戦略、ビジョンまで、求職者の知りたい情報が代表の言葉で詳しく語られています。面接に訪れる求職者の方からも、代表者メッセージが話題に上がることが多く、共感いただくポイントのひとつとなっています。
採用サイトコンテンツについて詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
【関連記事】採用サイトのコンテンツを事例で解説!求職者に伝わる企業の見せ方とは
indeed、googleしごと検索対応
現代の求職者は、求人に特化した検索エンジンでの検索も活発です。
そこで弊社でも、各募集要項のindeed掲載とgoogleしごと検索対応を行いました。
特にgoogleしごと検索は構造化したデータをHTMLに組み込む必要があるため、募集要項を作成する際に併せて追加しました。
SNSでの情報発信(Facebook、Instagram、Wantedly)
弊社の場合、媒体の特性を考慮しながらFacebook、Instagram、Wantedlyを活用して情報発信しています。それぞれ簡単にご紹介します。
Facebookの活用例
Facebookでは事業に関する情報を中心に発信する場として扱っています。
- 自社の販促物、ツールなどの紹介
- 制作実績の追加のお知らせ
- 新制度導入のお知らせ
などを通して「何をしている会社か?」を知ってもらえることを期待しています。
Instagramの活用例
Instagramでは事業に関する情報に加えて、社内の雰囲気や社員のプライベートなども掲載しています。
- 制作物の紹介
- 撮影オフショットなど、制作裏話
- スタッフのプライベートでの活動紹介
- 社内イベントのレポート
などを通して「どんな風に過ごすか?」が想像してもらえることを期待しています。
Wantedlyフィードの活用
ダイレクトリクルーティングに近くなりますが、Wantedlyのフィード投稿を活用して、代表自ら登場してさまざまなテーマについて考えを語るコンテンツを配信したり、社員に登場してもらいインタビューを掲載したりしています。
フィード配信を通して、どんな考え方を持った人が働いているのか、どんなキャリアパスを歩んできた人がいるのかなどを知ってもらえることを期待しています。
オウンドメディアリクルーティングでマッチした人材を獲得しよう
自社の採用サイトやSNSでの情報発信を通して、スキルも文化もマッチした人材を能動的に獲得していく手法が、オウンドメディアリクルーティングです。
売り手市場であることや、働き方改革による価値観の多様化などを受け、採用サイトなど自社で運用するメディアを活用する企業が増えていることが背景にあります。
運用体制を整えたり計画を立てるのは簡単なことではありませんが、オウンドメディアに掲載したコンテンツは半永久的に自社のものとして残すこともできるので、ぜひ取り組んでみてください。
ジーピーオンラインの採用サイト制作
採用ブランディングと採用マーケティングの視点から制作をおこなう、それがジーピーオンラインの採用サイト制作です。
コンテンツ企画や社員インタビューなどの取材、ライティング、撮影はもちろん、ブランドコンセプト策定やAI チャットボットの導入、SNS運用代行、映像制作など幅広く承ります。採用サイトの重要な要素となる写真は、撮影のディレクションをアートディレクターが担当することも可能です。
など、これまで当社ではたくさんの企業さまの採用サイトを制作してきました。
人材獲得競争が激化している現代、変化する求職者ニーズを正確に捉え、オウンドメディアでの最適な情報発信と求職者の共感醸成から求職者の母集団形成とマッチング精度の向上を支援します。
採用サイト制作サービスの詳細を見る
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WRITERさえ Webマーケーター
制作会社で営業・Web広告運用を経験したのち、2019年にジーピーオンライン入社。SEOやアクセス解析を中心に知識やノウハウを発信していきます。