Webサイトのサーバー移行で失敗しない手順とは?チェックリストと注意点も解説

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Webサイトのサーバー移行で失敗しない手順とは?チェックリストと注意点も解説

久永愛子

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Webサイトのサーバー移行で失敗しない手順とは?チェックリストと注意点も解説

こんにちは、ジーピーオンライン(@gpol_tw)の久永です!

Web制作会社で働いていると、古いサーバー環境で運用されているWebサイトに出会うことがあります。古すぎるサーバーでは、セキュリティのリスクや、サイトリニューアルの際に構築要件を満たせないリスクがあることはご存知でしょうか?

サーバーの乗り換えは、数年に一度程度の頻度で発生します。企業のWeb担当者の経験が長くても、サーバー移行は多くのWeb担当者にとって慣れないプロジェクトです。さらに初めて体験する担当者さまには何から進めればいいのか不安なことと存じます。

この記事では、Web担当者さま向けにサーバー移行の手順と注意点をまとめました。

失敗するサーバー移行とは

サーバー移行プロジェクトが失敗する主な原因は、準備不足と計画性の欠如にあります。ジーピーオンラインにお問い合わせいただく企業の担当者さまは、サーバー移行の重要性をご存知なため、具体的な見積書とスケジュールをご要望いただくケースが多いです。一方で、Webサイトに詳しくない方は「単純なデータ移動」と考えがちです。

失敗事例の多くは、移行の複雑さを過小評価し、十分なリソースや予算、時間を割り当てなかったケースのように見受けられます。特に注意すべきは、DNS設定の変更やデータベース移行、アプリケーション互換性の問題です。これらの技術的側面を軽視すると、長時間のダウンタイムやデータ損失、さらには顧客離れにつながる可能性があります。

また、Webサーバーだけでなく、メールサーバーも同時に移行する際は、さらに注意が必要です。メールサーバーの移行は、メール設定にも影響するため全従業員にも関係します。プロジェクトの責任者は、十分な計画と社内周知だけでなく、移行後のメール送受信トラブルに対応する窓口の人材配置など、しっかり人的リソースを割り当てることが大切です。

Webサイトのパフォーマンス向上にフォーカスすると、メールサーバーは分離しておくことが望ましいです。セキュリティリスクの軽減や運用の効率化にもつながります。さらには、サーバー自体にトラブルがあった場合のリスク分散にもなります。

サーバー移行の手順

サーバー移行ロードマップ

サーバー移行は、事前準備から完了まで複数のステップを踏む必要があります。各ステップを丁寧に実施することで、ダウンタイム(サーバー停止時間)を最小限に抑え、データ損失のリスクを軽減できます。

ステップに入る前に、作業自体を社内の情報システム部署で対応するのか、ベンダーに依頼するのかなど、誰がサーバー移行の実務を担当するかを決めておきましょう。Web担当者の方が直接手順を実行するケースはお見掛けしたことがありませんが、知識として知っているだけでスムーズなプロジェクトマネジメントにつながります。

  1. 現行サーバーの調査
  2. 新サーバーの要件定義と選定
  3. 移行計画の策定
  4. 新サーバーの契約と環境構築
  5. サーバー移行の実施(DNSの切り替え)
  6. サーバー移行後のチェックとアナウンス
  7. 旧サーバーの解約手続き

ステップ1:現行サーバーの調査

サーバー移行の第一歩は、現在使用しているサーバー環境を詳細に調査・分析することです。この段階で収集した情報が、後の移行計画や新サーバー選定の基礎となります。

調査すべき主な項目例

  • サーバースペック(CPU、メモリ、ストレージ容量)
  • 現在の使用状況(リソース使用率、トラフィック量)
  • インストールされているソフトウェアとバージョン
  • カスタム設定や特殊な機能の使用状況
  • セキュリティ設定(ファイアウォール、アクセス制限など)
  • バックアップ方法と頻度

調査結果は文書化し、サーバー移行プロジェクトチーム全員で共有することが重要です。特に注意すべきは、現行システムの「癖」や特殊な設定です。これらは新環境でも再現する必要があるため、詳細に記録しておきましょう。

一番重要なサーバーリソース使用状況の把握

現行サーバーのリソース使用状況を正確に把握することは、新サーバーの適切なスペックを決定する上で非常に重要です。単に現在の使用量を知るだけでなく、ピーク時の負荷やトレンドも分析する必要があります。

CPU使用率
  • 平均使用率と最大使用率
  • 負荷が高くなる時間帯や条件
  • 将来的な増加予測
メモリ使用量
  • 実メモリ使用量
  • スワップメモリの使用状況
  • アプリケーションごとのメモリ消費
ディスク使用量
  • 総使用量と空き容量
  • 増加率(月間/年間)
  • ファイルタイプ別の使用量
ネットワーク帯域
  • 平均トラフィック量
  • ピーク時のトラフィック
  • 外部接続数

※現行サーバーの調査例

ステップ2:新サーバーの要件定義と選定

新しいサーバーを選ぶ際には、現行サーバーの調査結果を基に必要なスペックや機能を定義します。これにより、移行後の運用がスムーズになり、将来的な拡張性も確保できます。

スペック定義のポイント

この先数年を安心してWebサイトの運用ができるように、基本的には現行サーバーより性能を上げることをおすすめします。

  • CPU: 現行使用率+余裕分(30%〜50%増)を確保
  • メモリ: 現行使用量+予備(最低1.5倍)
  • ディスク容量: 現行容量+将来増加分(2倍以上推奨)

サーバー選定基準

Webサイトやアプリケーションが動作するために必要なOS、データベース、開発環境を明確にします。これらの要件を満たすサーバーを選定する必要があります。

  • OS:現行OSと同じか互換性があるもの
  • データベース:MySQLやPostgreSQLなど現行サーバー環境と一致
  • 開発環境:PHPなどのバージョン対応が必要

【関連記事】Webサイト運用サーバーの選び方、特徴をふまえて解説!

ステップ3:移行計画の策定

移行計画はプロジェクト成功の鍵です。詳細なタイムラインとリスク管理を含む計画書を作成し、関係者全員で共有します。

新サーバー環境での構築スケジュール

新サーバーの環境構築にかかる時間を予測し、具体的なスケジュールを立てます。OSのインストール、ミドルウェアの設定、アプリケーションのデプロイなど、各タスクの所要時間を見積もり、全体スケジュールを作成します。

当日のスケジュール

移行作業当日の詳細なスケジュールを作成します。データのバックアップ、データ移行、DNS切り替え、動作確認など、各ステップの時間配分を明確にし、スムーズな移行を目指します。

ステップ4:新サーバーの契約と環境構築

選定した新サーバーを契約し、必要な環境を整えます。この段階ではセキュリティ設定やテスト環境構築が重要です。

環境構築手順

  1. サーバー契約手続き
  2. SSHアクセス設定
  3. Webサーバー・データベースインストール
  4. セキュリティ設定(ファイアウォール・SSL証明書)
  5. hosts設定または仮ドメインを使用して動作確認

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ステップ5:サーバー移行の実施(DNSの切り替え)

DNS切り替えは移行プロセスの中でも最も重要な工程です。切り替え後は一定期間、新旧両方のサーバーを並行稼働させる必要があります。

DNS切り替え手順

  1. TTL値変更(24〜48時間前)
  2. DNSレコード更新(新サーバーIPへ)
  3. 浸透状況確認(72時間以内)

並行稼働期間中はデータ同期を定期的に実施し、不整合が発生しないよう注意しましょう。

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ステップ6:サーバー移行後のチェックとアナウンス

移行後はWebサイトが正常に動作するか、すべての機能が正常に機能するかを確認します。問題がなければ、関係各所に移行完了をアナウンスをして終了です。

チェック項目例

  • SSL証明書有効性
  • フォーム送信機能
  • メール送受信状況
  • エラーログ確認
  • OGP画像表示
  • サイト表示速度

ステップ7:旧サーバーの解約手続き

新サーバーで安定運用が確認できたら旧サーバーを解約します。解約前には最終バックアップ取得と契約終了手続きが必要です。

解約前確認事項例

  • データ移行漏れなし
  • 最終バックアップ取得済み
  • 解約手続き完了通知受領

年間更新の場合などで、契約期間がまだ十分残っている場合は、無理に早める必要はありません。次回更新をしない旨の解約手続きをしておきましょう。

サーバー移行する際の注意点3選

サーバー移行は技術的な作業であると同時に、ビジネス継続性を確保するための重要なプロジェクトです。移行中に起こりうるトラブルを事前に想定し、対策を講じておくことが成功への近道となります。特に企業Webサイトの場合、ダウンタイム(サーバー停止時間)はビジネス機会の損失に直結するため、細心の注意が必要です。

DNS浸透期間への対応

DNSレコードの変更後、新しい情報がインターネット全体に浸透するまでには時間がかかります。この浸透期間中は、新旧両方のサーバーにアクセスが混在する可能性があるため、注意が必要です。

新旧サーバーの同時稼働の重要性

この期間中は新旧両方のサーバーにアクセスが分散するため、新旧サーバーの同時稼働を徹底しましょう。

SSL証明書の移行

SSL証明書の移行は、サーバー移行時に見落とされがちな重要ポイントです。証明書の移行が適切におこなわれないと、ブラウザに警告が表示され、ユーザー体験やセキュリティに悪影響を及ぼします。

SSL証明書移行の手順

  1. 現行証明書の確認
  2. 移行方法の選択
  3. 新サーバーでの設定
  4. 動作確認

特に注意すべきは秘密鍵の取り扱いです。秘密鍵はセキュリティ上重要なファイルであり、安全な方法で移行する必要があります。また、証明書の有効期限が近い場合は、移行を機に更新することも検討しましょう。

更新をストップする期間を設ける

サーバー移行中にWebサイトの更新を継続すると、データの不整合が発生するリスクがあります。特にCMS(コンテンツ管理システム)を使用している場合、管理画面からの更新がどのサーバーに反映されるかを制御する必要があります。

更新停止の計画ポイント

  • 最小限の時間になるよう更新業務の停止期間を設定
  • 関係者へ具体的な停止開始・終了時間の明示と緊急時の対応フローの共有
  • メンテナンスモードの有効化やCMS管理画面へのアクセス制限など技術的な制御
  • 更新業務再開の判断基準の明確化など、サーバー移行後の更新作業再開手順

更新停止期間中に緊急の更新が必要になる場合も想定し、例外対応の手順も事前に決めておくことが重要です。また、更新停止期間中はユーザーに対して適切な告知をおこない、理解と協力を得ることも検討しましょう。

実際にあったサーバー移行時のトラブル事例

サーバー移行は慎重に進めなければ、思わぬトラブルを引き起こすことがあります。以下の2点はジーピーオンラインの自社サイトを移行した時に、私が経験した事例です。

関係者全員が、何度もサーバー移行をしたことがあるWebサイト制作のプロでしたが、自社サイトなので計画書もなく片手間で対応していた悪い事例です。お客さまのプロジェクトは石橋を叩いて渡るのに、自社プロジェクトだと下も見ずに渡る、Web制作会社だとあるあるの話だと思います。せっかくの悪いお手本なので、解説いたします。

リダイレクト処理を失念!検索順位の下落に影響

サーバー移行後、Googleサーチコンソールで大量のエラーが発生しました。主なエラー内容は404と重複コンテンツです。移行先の新サーバーにおける仕様上の注意点でチェック不足があり、ひとつのページに4つのURLがインデックスされてしまう状況になりました。

結果、WebサイトのURLが違うけど中身が同じという、重複コンテンツと判断されました。大量の404エラーは、SEOにも影響が出るエラーです。気づいてすぐに対処したものの、一時的に全体的な検索順位が下がった月間となりました。

教訓

サーバー移行時には、SEO対応として301リダイレクトの設定は必須です。特にURLの構造が変わる場合は、旧URLへのアクセスをすべて新URLに適切に転送するよう設定しましょう。また、サイトマップの更新とGoogleサーチコンソールでの通知も忘れずにおこなうことが重要です。

テスト環境の用意が後回し!更新業務が一時ストップ

サーバー移行後、すぐにCMSを一部改修する運用業務が発生しました。テスト環境の構築を後回しにしていたので、テストサイトで確認するという手順を踏めず、「すみません!テスト環境を早く作ってください!」という事態に陥ります。

教訓

サーバー移行前には必ずテスト環境を用意し、実際の運用に近い状態で全機能の動作確認を済ませておくことが重要です。そして、更新停止の計画やサーバー移行後の更新作業再開手順などは、しっかり用意しておきましょう。

企業サイトのサーバー移行チェックリスト

サーバー移行を確実に成功させるためには、各段階で適切なチェックをおこなうことが重要です。以下のチェックリストを活用し、移行プロジェクトの抜け漏れを防ぎ、スムーズな移行を実現しましょう。

サーバー移行前のチェックリスト

サーバー移行の成功は、事前準備の質に大きく左右されます。以下のチェックリストを活用して、移行前の準備を万全にしましょう。

  • サーバー移行の目的と期待効果を明確化
  • サーバー移行は誰がおこなうかなどプロジェクトメンバーの明確化
  • 現行サーバーの詳細情報を収集・文書化
  • 新サーバーの要件定義
  • 新旧サーバーの並行稼働期間を決定
  • 更新業務の停止期間を決定
  • 移行スケジュールと当日のスケジュールの作成
  • 新サーバーの選定と申し込み
  • 現行サーバーのバックアップ計画を策定
  • テスト環境の構築計画を作成
  • リスク分析と対策を検討
  • エスカレーションフローを策定
  • 関係者へのサーバー移行通知計画を作成
  • ロールバック(元に戻す)手順を準備
  • 必要なツールとリソースを確保

特に重要なのは、現行サーバーの詳細な情報収集です。できるだけ多くの情報を収集しておくことで、移行後のトラブルを未然に防ぐことができます。また、このタイミングで、移行スケジュール、停止期間、影響範囲などを社内関係者に事前アナウンスしておくことが重要です。

サーバー移行中のチェックリスト

サーバー移行作業中は、計画通りに進んでいるかを常に確認する必要があります。以下のチェックリストを活用して、移行作業をスムーズに進めましょう。

  • 最終バックアップの取得と検証
  • 新サーバー本番環境の構築
  • 新サーバーテスト環境の構築
  • ファイル転送の完了確認
  • データベースの移行
  • データの整合性や動作確認
  • SSL証明書の設定
  • テスト環境の動作検証
  • TTL値の短縮確認
  • DNSレコードの更新確認
  • 関係者へのアナウンス

移行作業中は、各ステップの完了を確実に確認することが重要です。作業の進捗状況を関係者と定期的に共有することで、プロジェクト全体の透明性を確保しましょう。

サーバー移行後のチェックリスト

サーバー移行完了後も、新環境が正常に機能しているかを確認する必要があります。以下のチェックリストを活用して、移行後の検証を徹底しましょう。

  • Webサイト全ページの表示確認
  • フォームやインタラクティブ機能の動作確認
  • SSL証明書の有効性確認
  • エラーページの動作確認
  • リダイレクト設定の確認
  • バックアップシステムの動作確認
  • サーバーログの確認
  • パフォーマンス測定(表示速度など)
  • 関係者への移行完了報告
  • 旧サーバー解約手続きの準備

移行後の検証は、できるだけ多角的におこなうことが重要です。単にWebサイトが表示されるだけでなく、すべての機能が正常に動作しているか、パフォーマンスに問題がないかなど、細部まで確認しましょう。また、移行完了後も一定期間は新環境を監視し、潜在的な問題がないか注意を払うことが重要です。

まとめ:失敗しないサーバー移行のポイント

サーバー移行を成功させるためには、事前の準備、計画的な実行、移行後の確認が不可欠です。本記事で解説した内容をふまえ、失敗しないサーバー移行のポイントを5つにまとめました。

  1. 綿密な計画と準備
    (現行サーバー環境の詳細な調査と文書化、リスク分析と対策の検討)
  2. 十分なテストと検証
    (テスト環境での事前検証、本番移行前の最終チェック)
  3. データ保護の徹底
    (バックアップの検証、ロールバック手順の準備)
  4. DNS設定と並行稼働の管理
    (十分な並行稼働期間の確保、DNS浸透状況の監視)
  5. コミュニケーションの徹底
    (関係者への事前通知や共有、エスカレーションフローの策定)

サーバー移行は一見複雑で難しいプロジェクトに思えますが、本記事で紹介したステップと注意点を参考にすることで、リスクを最小限に抑えながら成功に導くことが可能です。計画的なアプローチと十分な準備が、サーバー移行成功の鍵となります。

企業のWebサイトは、重要な資産です。サーバー移行を通じて、より安定した高性能な環境を構築し、ビジネスの成長を支える基盤としてください。

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この記事の著者
久永愛子

WRITER久永愛子 Webマーケーター

2000年在学中から独学でWebサイト制作を経験したのち、2007年にジーピーオンライン入社。ディレクター、総務、広報、人事・採用などさまざまなポジションでの経験を活かし、Webサイト運用やWebマーケティングに関する情報を分かりやすく発信していきます。

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